五十肩は、肩関節に痛みや可動域に制限がみられている状態です。40代でみられるケースも増えており、その場合は「四十肩」と呼ばれます。両方の肩が痛む患者様もいらっしゃいますが、大半は左右の肩のどちらかにのみに症状が現れます。五十肩になる主な原因は、肩関節付近の老化です。加齢に伴って肩の筋肉や関節包に炎症が起こりやすくなり、肩関節周囲の炎症も強まります。軽度の場合は、肩を動かす際に違和感を覚える程度ですが、ひどくなると、痛みによって日常生活に支障をきたします。患者様の中には、夜中に痛みが強くなり、十分に眠れなくなることもあります。なお、炎症や痛みのピークは数週間程度といわれていますが、実際には長期にわたって痛みや不快感が続くケースも少なくありません。そのようなときは、医療機関を受診し、痛みを軽減させるための注射を行ったり、リハビリテーションによって肩関節の可動域制限を改善させたりします。
石灰沈着性腱板炎は、肩の痛みと運動制限が生じる疾患のひとつです。肩腱板内に沈着したリン酸カルシウム結晶などが原因となり、急性の炎症が起こります。患者様の多くは、睡眠中に突然、肩関節が痛んでしまい、飛び起きてしまうこともあります。痛みによって快適な睡眠が妨げられてしまうので、睡眠不足にもなります。そのため、なるべく早くに医療機関を受診し、痛みを取り除く治療を行います。具体的には、腱板に針を刺して沈着した石灰を吸引したり、消炎鎮痛剤を服用したり、局所麻酔剤などの滑液包内注射を行ったりします。
肩関節を構成している骨と骨のつなぎ目に当たる部分が、何らかの原因でずれてしまった状態のことを「肩関節脱臼」と呼んでいます。ラグビーや柔道など、ボディコンタクトの激しいスポーツをしているときに、よく起こります。高齢者や小さなお子さまの場合、転倒したときや腕をひねったときなどに脱臼してしまうこともあります。このほか、何らかの病気によって引き起こされるケースもあります。肩関節が脱臼すると、肩をうまく動かせなくなり、無理に動かそうとすると強い痛みが起こります。なお、肩関節は2回以上脱臼すると、繰り返しやすくなります。ちょっとした外力でも肩が外れてしまう「反復性肩関節脱臼」になることもあります。そのため、肩関節の整復だけでなく、肩関節可動域訓練や筋力強化訓練などの運動器リハビリテーションを行うことも大切です。